抽象絵画の先駆者Hilma af Klint(ヒルマ・アフ・クリント)の回顧展が、ニューヨークのソロモン・R・グッケンハイム美術館にて開催中
19世紀後半に活躍したスウェーデン人の女性画家、Hilma af Klint(ヒルマ・アフ・クリント)の回顧展が、ニューヨークのソロモン・R・グッケンハイム美術館で開催されています。
アフ・クリントの単独展としてはアメリカでは今回が初となり、ワシリー・カンディンスキーやカジミール・マレーヴィチ、ピエト・モンドリアンらに先駆けて、抽象絵画を創造した1906年- 1920年の作品群に焦点が当てられた非常に貴重な展示となっています。
「ヒルマ・アフ・クリント:未来のための絵画」
抽象絵画の先駆者と形容されるように、アフ・クリントは抽象絵画を描き始めた最初の一人と言われています。1862年スウェーデンのストックホルムに生まれた彼女は、82年から87年までの間、王立美術アカデミーで正当な美術を学んでいますが、彼女の作品に影響を及ぼしたのは「mysticism(神秘主義)」と言われています。
30代の半ばには4人の女友達と「De Fem(5人)」というグループを作り、神秘主義へと没入するようになります。そこで行われていたのは無意識のうちに何かを描き書き出すことや目で見ることを超えたコンテキストの表現など、これまで風景画や植物などを描いていた彼女は、それらを超えてより抽象性の高い作品を描いていきます。
一般的に抽象絵画の創設者といえばカンデンスキーやモンドリアンなどと言われています。彼らが抽象絵画を描き始めたには1910年前後と言われていますが、クリントは1906年頃からすでに他に類のない抽象的な絵画を描いていたと言われています。
そして、それらの絵画は自身の没後20年は公開しないという本人の希望があったこともあり、1986年まで一般に公開されることがなかったのですが、近年になってその先見性が注目されるようになっています。
物質世界からの離脱と精神世界への没入
ルドルフ・シュタイナーとの交流
また、1908年、オーストリアやドイツで活動した神秘思想家、哲学者、教育者であるルドルフ・シュタイナーと出会っており、シュタイナーが唱える人智学(物質世界を越えた超感覚的な世界観を持つ思想)に自分の考えと近いものを感じ、それ以降作品の表現はより鋭いものとなり抽象性が高まったとされています。
人智学や精神世界が何なんか、僕のような凡人には全くわかりませんが、アフ・クリントやカンデンスキーらが残した抽象絵画や様々な芸術的概念は、現代でも様々な芸術や建築、プロダクトのデザインに影響を与えていますね。
グッケンハイム美術館では2019年4月23日まで同回顧展を行っているそうです。ニューヨークに行かれる方は立ち寄ってみてはいかがでしょうか。